奥州市 コロナ禍 病床100減計画 医師不足の解消こそ

コロナ禍で公立病院の重要性が明らかになったのに、入院ベッドを大幅に減らすー。奥州市(人口11万4900人)で市立医療施設のベッド(計235床)を今後100床も削減する計画案が急浮上。住民置き去りの進め方に懸念の声が相次いでいます。

「なぜコロナで大変な時にベッドを減らすのか」奥州市で小学1年生の息子を育てる佐藤美雪さん(39)は危機感を募らせます。

高リスクの妊娠だった佐藤さんは、市内にお産できる公立病院がなかったため県立中部病院(北上市)まで行って出産。市内でお産を扱う開業医は2人だけで、新生児の半数は市外で生まれているのが実態です。

「地元の公立病院に参加や入院可能な小児科がなければ、若者が住めなくなる」。佐藤さんは仲間たちと「医療を考えるパパママの会」を結成し、行政に働きかけてきました。

奥州市には市立医療施設として、総合水沢病院、国保まごころ病院、前沢診療所、衣川診療所があります。149床の総合水沢病院には7月から常勤の小児科医が着任。佐藤さんは「もしベッド数が半減したら、医師が辞めてしまわないか」と不安を隠せません。

安倍政権下で厚労省は、全国424(その後440に修正)の公立・公的病院の再編統合計画を発表(2019年9月)。リストアップの基準は「診療実績が特に少ない」「似たような機能を持つ病院が車で20分以内にある」という機械的なもの。国の医療費抑制へ、都道府県の「地域医療構想」策定とベッド数見直しを一気に進めようとしたのです。

岩手県では総合水沢病院など10病院が名指しされました。日本共産党の高橋ちづ子衆院議員が調査に訪れた際(19年12月)、県保健福祉部長は「(10病院は)直ちに病院機能の大幅な見直しにつながらない」「医師不足こそ課題だ」との見解を示しました。

高橋氏が2月に総合水沢病院を訪問した時に、菊池淳院長は「国は中小の病院を切り捨てるのか。急性期と回復期を併せ持つ医療が地域には必要だ」と指摘。奥州市と金ヶ崎町で活動する胆江労連も2月にシンポジウムを開き、コロナ禍での公立病院の役割を問いかけてきました。

県内9つの2次医療圏のうち、胆江地域だけベッド削減計画が突出している背景には、医師会長など委員9人で構成する「奥州市地域医療懇話会」の議論があります。市が深刻な財政難に陥り、市立病院新築には「余裕」のあるベッドを減らすしかないというのです。

共産党の千田美津子県議は「『懇話会』では異論が出ないなと、住民不在です。空きベッドがあるのは医師が不足しているからで、削減すればさらに医師が呼べなくなる」と危惧します。

共産党は、「パパママの会」の「地域医療の充実を求める」アンケートに協力し、3000人から声を集めようと奮闘。千田県議は「大もとには政府が再編統合計画を撤回せず、医師増員も拒む問題がある。『自助』を押し付ける菅政権を代えたい」と力を込めます。

 

(「しんぶん赤旗」10月1日付より)

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