被災者の医療費など免除 11年目へ 住民らの署名で継続させた

東日本大震災津波から10年。岩手県は被災者の「命綱」となっている医療費等の免除を11年連続で実施しています(12月末まで)。全国で大規模な災害が続発するなか、被災者に寄り添う施策の先駆性が注目されています。
「少ない国民年金で暮らしているので、医療費免除は本当に助かるよ」。陸前高田市で被災した86歳の男性は、2021年も免除が継続したのを心から歓迎します。夜に体が突然痛み、朝まで耐えたものの、救急車で大船渡市の病院へ搬送、緊急手術を受けて一命を取り留めた―という体験があります。

共産党議員動く

岩手県は被災者の医療費(国保、後期高齢者医療制度)と介護保険利用料、障がい福祉サービス利用料を免除しています。県と市町村による共同の負担で、これまでに、延べ28万9000人余の被災者が利用しています。
県は2021年の免除継続を検討し、県議会も2020年6月定例会で免除継続の請願を賛成多数で採択。しかし、沿岸12市町村長からは当初、財政難を理由に「廃止が適当」「10年が区切り」との声が相次いでいました。
これに対して日本共産党の沿岸市町村議員団は、各地で免除継続の署名を被災者に呼びかけました。
まず山田町の木村洋子町議が動きました。「医療費免除で、がんの手術ができた人もいた。免除打ち切りなら低年金の高齢者は通院できなくなる」。知り合いの被災者30人余に署名集めへの協力を率直に訴えました。
快諾したのが古川蓉子さんです。老健施設に勤めていた夫を津波で亡くし、築3年目の自宅も流失。いまは災害公営住宅で1人暮らしです。持病を診てもらえる消化器内科と耳鼻科は山田町になく、高い交通費をかけて宮古市や釜石市へ通院しています。
「私は最後まで、困っている人の役に立ちたい」と古川さんは、徒歩で知人の家を訪問し、署名を依頼。多くの被災者が喜んで書いてくれたと語ります。
集まった署名は1171人分で町の人口の約1割に。木村町議は「鉛筆書きだったり、震えた字だったり、署名が初めてのような人もいて、胸が熱くなった」。10月28日には佐藤信逸町長に会い、署名を提出。佐藤町長は「署名を重く受け止める。県にも報告する」と回答し、後日、免除継続を表明しました。
署名は陸前高田市、釜石市、大船渡市、大槌町でも取り組まれ、市町村と県との合意を促しました。

うらやましいと

達増拓也知事は11月16日の会見で、医療費免除を1月~3月末は現行制度で、4月~12月末は住民税非課税世帯限定で継続すると発表。非課税世帯の比率は国保で42.2%、後期高齢者医療で76%を占め、計56.3%の被災者世帯が対象になります。
前述の陸前高田市に住む男性の医療費免除も継続。男性は「隣の宮城県気仙沼市の被災者から、うらやましがられる」といいます。
共産党の斉藤信県議は「11年目も続く医療費免除は復興の『金字塔』です。この経験を生かす検討を進めたい」と話しています。

<3月5日付・しんぶん赤旗掲載記事>

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